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第9回「泣けなくていいんだよ。」

真の問題解決のためには、自分のありのままの感情を認める必要があります。
しかし、それは時に、自分の全存在を賭けるほどの大変な勇気を必要とします。
これは私の先輩カウンセラーさんの姉が交通事故で即死した時のことです。
事故から1ヶ月ほど過ぎた頃に、突然首から背中にかけての強い痛みに襲われたそうです。
この時はしばらくたって痛みは治まったそうですが、半年後にまた同じ箇所の痛みがぶり返し、この時は数日ほど寝たきりになるくらいの状態だったそうです。
長くなりますが、以下先輩カウンセラーさんの著書から抜粋します。

”この痛みの理由を私なりに考えていました。そしてこれは、姉の死をきちんと悲しむ作業ができていなかったからではないかという仮説を立てました。
精神分析の専門用語に、モーニング・ワークという言葉があります。
悲哀(moaning)の仕事という意味なのですが、例えば自分にとって大切な人を失った時、その悲しみが癒されていくためには、思い出しては泣き、孤独になり、なつかしむ・・・といった心の過程を何度か通らなければなりません。
(中略)
これは誰かと死別した場合に限りません。小さい頃に悲しかったり、くやしかったりした時に、ちゃんと泣いて、しっかりと悲しみや憎しみを発散した人はしこりを残しませんが、我慢してきた人ほど、あとになって対人関係のトラブルを起こしがちのようです。
感情を発散させるべき時にちゃんと出せるということが、心身の健康上とても大切なのだということを、つくづく思わされます。

さて、話しを私のことに戻しますが、姉は首の骨を折っての即死でした。
そのことを考えると、私の首の痛みは、姉の突然の死に対しての罪悪感・うしろめたさのようなものから来ているように思えます。
自分も同じように首を痛めることで それを償おうとしているに違いないと感じました。
そして姉の死のために充分に泣ききっていないがゆえの痛みなのだろうとも思いました。
(中略)
帰りの電車の中、私はずっと考え、思っていたことを先生に告げました。
「私は姉が死んだ時、たった3日間しか休まなかったし、充分に泣いていません。だから、こうしていつまでもジクジクと痛みをぶり返すのだと思います。あの時先生が私に、メソメソと泣いている場合じゃないなんて厳しいことを言うから、私は我慢して泣かないでがんばってきたんです。でも、やっぱりもっとちゃんと泣くべきだったと思っています。」
先生は私の訴えを黙って聞いてくださいました。
それから静かに私の方を見てこう言われたのです。
「あなたは悲しんでなんかいない。」
一瞬世界の音が止まったように感じました。
それから先生は続けて、「あなたがしなければならないのは、泣くことではなくて、泣けない自分を認めることだ。」と言われました。
そんなばかな・・・と思いつつも、抗うことができずにいる自分に二重のショッ クを受けました。
「身内を失ったのだから、もちろん全然悲しくないはずはないと思う。しかし、 私はあなたのお姉さんを知っている。お姉さんはあなたに対して支配的なところがあって、あなたはそれを窮屈に思っていた。そのお姉さんがいなくなって、あなたはホッとしているはずだよ。でもあなたは自分がそんな薄情な女であるはずがない、自分はもっと優しいはずだと思いたいんだ。それで現実をごまかすために、自分はまだ泣ききっていない、充分に悲しんでいないという言い訳を見つけだしたんじゃないだろうか。もし、私が死んだらどうだろう。あなたは少しは泣いてくれるんじゃないかな。(でもちょっとこれもあやしいけどと言いながら)なぜなら私には親切にしてもらったという思い出があるから、泣かなくっちゃ、泣かなくっちゃと思わなくてもひとりでに涙が出るよね。でも、あなたとお姉さんとの関係を考えた時に、あなたが泣けないのは当然だと思うよ。泣けなくていいんだよ。薄情な自分を認めたらいいんだよ。」
私は先生の言葉にひどく納得しました。
そして、「先生、そのとおりだと思います。」と言って、ハッと気づいたのです。なんと、ほんの少しも動かすことのできなかった私の首が完全に横を向いて先生と話しをしていたのです。痛みはうそのように消えていました。 (「自分」を愛するために 渡辺裕子著”より抜粋)

とても、示唆的な話しです。 ちなみに「泣いていいんだよ。」なのか「泣けなくていいんだよ。」どちらなのか適切に感じとれるかは、自分自身の光の部分も闇の部分も、どこまで正面から認めることが出来ているかによるかと思います。 他者受容は自己受容に比例するってやつです。
ただこのレベルまで来ると、これはプロの領域ですね。

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